身寄りのない人が死亡したらアパートはどうなる?対応方法を解説!

2025.09.29

身寄りのない人がアパートで亡くなった場合、大家や管理会社、近隣住民にとって「この後どうすればよいのか」という不安は大きいでしょう。孤独死や単身世帯の増加が社会的に注目される中、現実的に誰がどのように対応するのかを知っておくことは安心につながります。

この記事では、身寄りのない人が亡くなった際に必要となる対応を解説します。万一のときに慌てないための参考として、ぜひご覧になってください。

身寄りのない人が亡くなったら最初に取るべき行動


突然、身寄りのない人がアパートで亡くなっているのを発見すると、動揺してどう行動すべきか迷ってしまうものです。しかし、最初の対応はとても重要であり、誤った行動はその後の手続きを複雑にしてしまう可能性があります。まずは落ち着いて正しい手順を踏むことを心掛けましょう。

警察に連絡を入れる

身寄りのない人が亡くなった場合、まず行うべきは警察への通報です。事件性の有無や死因を確認できるのは警察だけであり、法的にも警察が最初に対応することになっています。室内から異臭がしたり、害虫が発生したりしているといった異変に気付いた場合も、速やかに110番通報をしましょう。

特に賃貸物件では、近隣住民が異変に気付いて警察へ通報するケースも少なくありません。警察が到着すると、立ち会いのもとで室内の確認や必要な調査が行われます。こうした対応によって、死亡原因や事件性の有無が明らかになり、今後の手続きの土台が整います。迷った際にも、まずは110番通報を徹底することが重要です。

救急車は呼ばない

死亡が明らかである場合には、救急車を呼ぶことは適切ではありません。救急隊員は死亡確認を行う権限を持たず、現場に到着しても遺体を動かすことはできないためです。そのため、119番ではなく110番へ通報するのが正しい対応となります。

もし誤って救急車を要請してしまうと、現場対応が二度手間となり、混乱を招く原因となります。ただし、心肺停止直後で生存の可能性がある場合には、迷わず119番通報が必要です。この区別を正しく理解しておくことで、いざというときに冷静に行動できます。

状況を見極め、「明らかに死亡している」場合には救急車ではなく警察に連絡することを徹底しましょう。

遺体には触らずに警察が来るのを待つ

発見後、警察が到着するまでの間は遺体に触れず、そのままの状態を保つことが非常に大切です。善意から服を着せ直したり、遺体の位置を動かしたりしてしまうと、現場保存ができなくなり死因や事件性の調査に支障を来します。

また、体液や血液などに触れることで感染症リスクが生じる可能性もあります。宗教的な思いや「そのままにしておくのは気の毒」という気持ちから触れたくなる場面もありますが、警察が確認を終えるまでは控えるべきです。発見者にできる重要なことは、冷静に現場を維持し、警察が来るのを静かに待つことだと理解しておきましょう。

連帯保証人と連絡を取る

警察の調査が終わった後は、賃貸契約者の緊急連絡先や連帯保証人へ連絡を行う必要があります。身寄りのない人でも、賃貸契約には保証人が設定されている場合が多く、家賃滞納や室内の損傷などがあれば保証人が対応する義務を負う可能性があります。

また、保証会社を利用しているケースでは、会社側が費用精算や原状回復の対応を行う流れとなります。さらに相続人が存在する場合には、オーナーや管理会社が相続人の探索を進めることになるでしょう。

相続放棄が選択される場合もあり、法律的に整理が必要な手続きとなるため、早めに連絡を取り合い状況を確認することが重要です。オーナー側にとっても退去や清掃の進行に関わるため、迅速な連絡が欠かせません。

身寄りのない人が亡くなった場合のアパートの遺品処理はできる?

アパートで身寄りのない人が亡くなった場合、残された遺品をオーナーや管理会社が勝手に処分することは法律上認められていません。賃借人が亡くなった時点で、室内の動産は故人の財産に含まれます。

まずは相続人がいるかどうかを確認する必要があり、その調査には出生から死亡までの戸籍を取り寄せて確認する「戸籍調査」が欠かせません。専門的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。

仮に相続人がいない場合であっても、故人の遺品は依然としてその人の所有物であるため、物件オーナーが勝手に処分することはできません。この場合は「相続財産管理人」を家庭裁判所に申し立てて選任する必要があります。

相続財産管理人は弁護士などが就任し、遺品整理や賃貸契約の解約、借金の返済といった法的手続きを代行します。孤独死の増加に伴い、管理会社が独断で遺品を片付けてトラブルになった事例も報告されているため、法的手続きを経ることが重要です。勝手な処分は後に損害賠償を請求される恐れがあり、必ず家庭裁判所の手続きを踏む必要があると理解しておきましょう。

相続財産管理人の権限

相続財産管理人には、故人の遺産を管理し、適切に処理する権限があります。もっとも、その権限は無制限ではなく「財産の保存・利用・改良」に限定されており、遺品を売却したり廃棄したりする処分行為については家庭裁判所の許可が必要です。例えば、アパートの解約や遺品の処分は、相続財産管理人が裁判所の判断を得て初めて行うことができます。

また、遺品を売却した場合の売却益は、未払いの家賃や光熱費、債務の返済などに充てられます。財産が残れば国庫に帰属する流れです。

実際に相続財産管理人を務めるのは弁護士が多く、専門的な判断が求められます。選任には戸籍一式や財産を証明する資料、申立書などが必要となり、収入印紙・官報公告費用・予納金として20万〜100万円程度の費用が発生する場合があります。金額は裁判所の判断や遺産規模によって異なり、必ずしも一定ではありません。

オーナーや管理会社が状況を正しく理解し、管理人を通じた手続きを進めることが求められます。

相続財産管理人の選任手続きの流れ

相続財産管理人を選任するには、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。オーナーや管理会社にとっても重要な場面となるため、流れを理解しておくことが大切です。ここでは、手続きを段階ごとに整理して紹介します。

1. 申立てできる人を確認する

申立ては、賃貸物件のオーナーや管理会社といった「利害関係人」、または検察官が行うことができます。オーナーは未払い家賃や室内損傷に直面する立場であるため、申立人になれるのです。

2. 管轄する裁判所に申立てる

手続きを行うのは、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。例えば東京に住んでいる方なら、東京家庭裁判所が管轄となります。

3. 必要な条件を満たす

申立てが認められるには、以下の条件が必要です。

  • 相続人がいない、または相続放棄されている
  • 故人に一定の財産(遺品や預貯金など)がある

財産がほとんど残っていない場合には、選任されないケースもあります。

4. 必要書類を準備する

提出する代表的な書類は以下の通りです。

  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 住民票除票(亡くなった事実を確認できるもの)
  • 賃貸契約書、財産を示す資料(通帳や不動産資料など)
  • 申立書、印鑑など

場合によっては遺品目録や候補者に関する資料を求められることもあります。

5. 費用を納める

申立てには収入印紙や郵便切手代に加えて、「予納金」が必要です。予納金は家庭裁判所に事前に納めるお金で、20万〜100万円程度が目安とされています。金額は故人の財産の規模や裁判所の判断によって異なります。

6. 裁判所が審査・選任する

必要な書類と費用がそろうと、裁判所が審査を行い、相続財産管理人を選任します。管理人には弁護士などの専門職が就任することが多く、遺品整理や契約解約、債務整理などを進めます。

このように、相続財産管理人の選任には段階的な手続きと相応の費用が必要です。オーナーや管理会社は、早めに司法書士や弁護士へ相談し、実務上の準備を整えることが安心につながります。

身寄りのない人が亡くなった場合のアパート解約をするには?

アパートの賃借人が亡くなったとしても、賃貸契約が自動的に終了するわけではありません。相続人がいる場合は契約を引き継ぐことになり、相続人がいない場合も契約がそのまま残るのが原則です。そのため、オーナーや管理会社が独断で遺品を処分したり解約手続きを進めたりすることはできません。

解約を行うには、まず相続財産管理人が選任される必要があります。アパートの解約は財産の処分行為に当たり、家庭裁判所の許可を得ることが前提です。許可が下りた後に敷金の精算や合意解除を行うことで、正式に解約が成立します。

実際には、自殺や孤独死などのケースで契約が残り、オーナーが困る事例がしばしばあります。しかし、法的手続きを経ずに独断で解約すると、後に相続人が現れた場合にトラブルに発展する危険があります。通常は、家庭裁判所の許可を受けてから解約する流れになると理解しておくことが大切です。

身寄りのない人が亡くなった場合の遺品整理・原状回復の費用は誰が払う?

身寄りのない人が亡くなった場合、アパート内に残された遺品整理や原状回復、特殊清掃の費用は誰が負担するのでしょうか。一般的には、相続人や連帯保証人がその費用を負担します。未払いの家賃や修繕費も同様で、保証人が義務を負うケースが多く見られます。

自殺の場合は、将来の賃料減額を相続人や保証人に請求できる場合もあります。一方で病死や事故死の場合には、賃料減額を請求することはできません。敷金があれば原状回復費用に充てられますが、不足する分は借主側の負担です。

ただし相続人がいない、または相続放棄をした場合には、オーナーや管理会社が費用を立て替えるしかない状況となります。遺産がなければ、回収不能となるリスクがある点も理解しておく必要があります。

特殊清掃費用は数万〜数十万円、リフォーム費用は数十万円規模になることもあり、決して軽い負担ではありません。オーナーや保証人にとっても大きな問題であり、事前に契約内容を確認しておくことが重要です。

オーナー・管理会社が備えておくべきこと

身寄りのない入居者が増える中で、大家や管理会社にとっては「もしもの備え」を整えておくことが重要です。孤独死が起きてからでは、遺品整理や契約解約に時間と費用がかかり、入居者募集の再開も遅れてしまいます。事前にリスクを理解し、予防的な対応を行うことが望ましいでしょう。

具体的には、賃貸契約を結ぶ段階で保証会社を利用することで、費用回収や手続きがスムーズになります。また、緊急連絡先を複数登録してもらう、入居者の高齢化に合わせて見守りサービスや安否確認システムを導入することも有効です。これにより、発見の遅れを防ぎ、清掃や原状回復にかかる負担を軽減できます。

さらに、孤独死保険や原状回復補償特約の付帯を検討することで、予期せぬトラブルに備えられます。こうした備えは、オーナーにとって安心であるだけでなく、入居者に対しても安全で信頼できる住環境を提供することにつながります。事前の備えがあるかどうかで、万一の際の対応が大きく変わることを意識しておきましょう。

まとめ

身寄りのない人がアパートで亡くなった場合、まずは警察への通報と遺体の現状保存が最優先です。その後の遺品処理やアパート解約には、相続財産管理人を通じた家庭裁判所での手続きが必要であり、オーナーや管理会社が勝手に進めることはできません。費用についても、原則は相続人や保証人が負担しますが、相続人不在や放棄の場合はオーナー側にリスクが及ぶ可能性があります。

孤独死や高齢単身世帯の増加により、この問題は今後ますます身近なものとなるでしょう。万一の際に慌てず正しい手続きを踏むためにも、あらかじめ流れを理解しておくことが安心につながります。

アールエージェンシー株式会社では、特殊清掃や遺品整理の実務をサポートしております。身寄りのない方の死後の対応に不安を感じた際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。